土手と夫婦と幽霊 -The River bank,The Couple,The Ghosts-
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165.墓参

9/19/2021

 
彼岸は明日からということですが、昨年亡くなった父の墓参りに行きました。墓を磨いて、父が好きだったキリンラガーを置いて、『土手と夫婦と幽霊』の公開について少し報告をしました。
父は若い時分に絵本作家を目指していたらしいのですが、結果認められず、脱サラし料理人となり、小料理屋を営みました。私が小中学生の頃、映画によく連れて行ってくれたのが父で、私が映画を好きになったのは父の影響が大きかったのですが、父は私の作る映画に対して褒めてくれたことや喜んでくれたことは一度もありませんでした。それどころか気に入らないとよく零しておりました。

映画祭でグランプリを獲ったことをいいことに、久し振りに見せたのが『土手と夫婦と幽霊』でした。あまり良い顔は見せませんでしたが、確か、今までで一番映画らしかった、というようなことを言っていたと思います。おそらく他の人の評価を曲げてまで私と喧嘩をしたくなかったのかもしれません。
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高校卒業後、私はすぐに家を出て、新聞奨学生として大学に通ったので、あまり家に帰りませんでした。『ニューシネマパラダイス』でアルフレードがトトとの別れ際に言った「ここにはもう帰ってくるな」という言葉が私にとっての免罪符でした。『ニューシネマパラダイス』は父の大好きな映画でした。それに、その頃には、私にとって父は大した男ではありませんでした。むしろ苦労人の母にはいつも申し訳なく思っていました。

大人になってからは、父とは良い思い出があまりありません。強いて言えば、息子や娘のことを可愛がってくれたことくらいでしょうか、それでも煩いのが嫌いな人だったので、子どもが騒げば怒鳴りました。

そんな父は昨年コロナ禍にあって、持病が悪化し、病室で誰とも会えず人知れず息を引き取りました。最期は半ば自死に近いものだったように思います。寂しい最後でした。
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今日はよく晴れてくれたので、富士山がよく見えました。子どもたちがどんぐり拾いに夢中になっていました。私の母も加わっていました。見上げたら、葉に蝉の抜け殻がしぶとくとまっていました。人生を春夏秋冬に区切るなら、私にとっての長い夏が終わったのかもしれないと少し考えました。紛れもなく『土手と夫婦と幽霊』は私の夏に作られた映画だったように思います。

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    土手と夫婦と幽霊

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