土手と夫婦と幽霊 -The River bank,The Couple,The Ghosts-
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411.カナザワ上映に寄せて~中也効果~

8/9/2022

 
今回「徳田秋聲記念館」での上映ということで、私の映画が直接的に文学と関わりが持てるとは、おかげさまで日々感動は続いているわけですが、これを機会に改めて文学の角度から本作を振り返ってみたい、そんな今日この頃です。
実はカナザワ上映のトークイベントでは、主演の星能豊さん、今回のイベントに尽力してくださった企画者でもあるスチールの田畑さんに加えもう一人、会場の「徳田秋聲記念館」の学芸員である薮田様とお話いたします。

実はこの薮田様、以前は「中原中也記念館」で学芸員をしていたこともある中也研究者でもあるのです。何を隠そう、私は正直徳田秋聲さんはそこまで齧ってこなかったのですが(ごめんなさい!)、中原中也に関しては「冬の長門峡」が好きで、実際の長門峡まで足を運んだり、知り合いの書家さんに額に飾るために筆で書いていただいたりと熱を入れていた時期もございました。
(これはトークでもお話したい内容なのですが、)中原中也に「一つのメルヘン」という詩があります。昔山口の湯田温泉まで中也のお墓参りに行きました。その墓地のそばを流れる吉敷川がこの詩の舞台と言われています。この川は水無川の異名があったそうです。

今迄(いままで)流れてもいなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れているのでありました……

この詩は死んだ弟を哀悼したものだと言われているのですが、私はこの中で流れている「川」は、地上のものではない気がしていて、「さらさら」とあるけれど、おそらく実際の水は流れていないのではないかと思っていました。と同時に「さらさら」という表現に何だか清潔な、生気を感じる音だと感じていました。

実は『土手と夫婦と幽霊』の中で、川が映っていない場所に、あえて効果音として「水」の音を付けている箇所が何カ所かあります。私の場合、「さらさら」ではなく、「ぽろぽろ」という音が聞こえていたので、それに近い音を探しました。

『土手と夫婦と幽霊』は、一見幽霊の話なので、まずは彼等がいる場所を探さなければなりません。水場に幽霊が現れるなんて話を聞いたことがありますが、私はどうしても川のそばにはいない気がしました。けれど、どこか心地よく川の音が聞こえている。彼等にとって、とても懐かしい、生きた心地のする音です。そんな舞台を整えたかったのです。というように、そこには無い音を持ってくる演出のことを、私は「メルヘン(中也)効果」と呼ぶことにしています。つづく。

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