72.アクシデント

メイキング写真を眺めていて思い出した。クランクインしてすぐに起きたアクシデントのこと。

最初の撮影は、S#26の回想シーン、主演の二人と妹役の由利尚子さんが出演のシーンだった。順調に進んでいると思いきや、急にカメラの電源が入らなくなった。人から譲ってもらった「新しいカメラ」だった。私は急いで「別のカメラ」を取りに自転車を走らせた。その時ばかりは、現場が多摩川で本当に良かった！

「幽霊の映画だから、もしかして…」なんて噂したっけか。だいぶ時間をロスしてしまったので焦ったけれど、初日のため元々スケジュールを緩めに組んでいたおかげで事なきを得た。監督にとっては、幽霊より撮影延期や追撮、リテイクの方が怖い。あんな思いはもうしたくないと思う。

壊れたカメラは縁起が悪いので、その後一度もその「新しいカメラ」で作品を撮ることはなかった。急遽出番を取り戻した「別のカメラ」は、その後一緒に色々な作品を撮った。60Dよ、私にとってお前は、急場をしのいだ名機であり、生涯の友である。