出演者コメント
星能豊
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「小説家を演じる」にあたり、本人が書いたという設定の小説を渡邉監督からいただきました。 役に対するアプローチとしては、実際に小説があるということは新鮮でした。そして実際に書いた小説のとおりに劇中でも物語が進んでいくことを体現するという、演じる自分自身が、どう言えばいいのでしょう、パラレル感もあり、素晴らしい時間を過ごすことができました。
この作品は「湖畔の映画祭」で主演俳優賞をいただきました。自分の演技は正直、上手いと思ったことはありませんが、地元・金沢で細々とめげずに続けてきた結果として、もっとできるだろ、という励ましの形だと受けとめています。 その時に『いつくしみふかき』企画・主演の遠山雄さんと出会いました。遠山さんの演技はもちろん、自身の出演作品を届けようとするパワーに圧倒されました。主演俳優賞をいただき、おかげさまで出演や上映機会が増えましたが、今はコロナ禍。それでも映画は作られようとしています。今までは脚本をもらって演じることを第一に熱心に取り組むことが多かったですが、最近は役作りをはじめるその前に「どうしてこの映画を作ろうとしたのか」ということをさらに理解することに時間をかけている自分がいて、結果、役作りへと昇華されていると感じています。 映画館という暗闇の中で、友人、知人はもちろん、見ず知らずの人とひとつの映画を観るという時間が僕は好きです。ぜひスクリーンでご覧ください。 |
カイマミ
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「特定の人物」ではなく、1 人の「女」。深い悲しみを持つ、1 人の「女」というイメージを持っていました。細いグニャグニャになった1本の針金を頭上から突き刺したかの様な心象です。 そして、この「女」の存在は「男」がいて成り立つと思いました。そこに輪をかけて存在する何者達の存在も含め。光を求めて「もがく」姿を垣間見て頂ければ嬉しく思います。
「日本芸術センター映像グランプリ」でグランプリを受賞したお知らせを頂いた時、ひたすらひたすら嬉しく、また大きな翼を授けて頂いた様に思いました。きっともっと沢山の方に観ていただくことができる!と。感謝の気持ちでいっぱいでした。そして、今に至るわけです。心を込めて、多くの方々に感謝致します。 |
佐藤勇真
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原作、そして脚本を読んだ時、私が演じた「高橋」は、登場人物の中でも最も孤立した存在だと思いました。よって、他のキャラクターと絡む時は、客観的な違和感が強めに出ればと思って演じたのを覚えています。「こいつ何者なの?」と思わすことで、他人と居る時と一人で居る時の違いが出せたらと思いました。
本作では、普通であることが「普通」ではないような気がします。そもそも「普通」とはなんなのか。本作に描かれた世界は、どこか逆転した世界のようにも見えてきます。登場人物たちのある種不気味な、噛み合わない関係性、そしてモノローグ。そこにある『私』の感情は、一つの見どころになっています。ぜひ劇場で御覧ください。 |
小林美萌
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私の頂いた役は、「髪の短い女」という役名で、私の中ではとても強いインパクトがあり、襟足を刈り上げて、どのキャストよりも短くありますようにと祈りつつ撮影に臨みました。監督は全くそこは重要事項ではなかったと思いますが。
私の一番のお気に入りは食卓シーンです。いろんな映画に食卓シーンは数多く出てきますが、一風変わっており、何度出てきても新鮮で、毎回楽しめます。 モノクロの世界が、当たり前から一歩踏み出してこそ見える景色となり、音、温度、匂い、感触、味、映画館に座っていながら、頭の先から爪先まであらゆる感覚が研ぎ澄まされる。まるで別世界に連れて行かれるようなそんな感覚にとらわれます。自然の美しさが格別なのです。世界中の様々な文化の違う方々が、渡邉監督の頭の中を覗き見て、心をひゅっとすくわれる、くるっとひっくり返される、そんな不思議が詰まっています。今動物として生を受けたからこそ抱ける感情、感覚、そんな特別を存分に味わってください。今ある愛を、そしてこれからもずっと続く愛を、皆さんが大切に守ってゆけますように。 |
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